ファドがもたらす供給サイドのジレンマ
NHKで焼酎ブームによる店頭価格高騰が、生産者を悩ませているという。
その理由は、価格高騰によって日常的に呑んでいたユーザーからは手の届かないものとなってしまうからである。たまに呑むユーザーなら高い金を出してみても「味わってみたい」「試してみたい」という欲求もあろう。けれども毎日呑む酒に1本1万も出していられない。
生産者からすると、“売上高変化なし”“固定客乖離”という、とんでもない状況となっている。
定価販売を目的として特約店制度を導入したものの、特約店から市場に放出された商品が転売されプレミアムが加味されていく。最終的に価格は5倍以上にも跳ね上がっていくそうだ。
焼酎のように“安酒”というバックグラウンドを持つ酒にとって、焼酎ブームは耳障りな風潮以外の何者でもないだろう。(このあたりはマールやグラッパも同じかもしれない)
そもそも手工芸や食料品などでは安易に生産規模を拡大できないの一般的で、供給サイドが需要に歩み寄るためには、“同品質”という前提を放棄しなければならない場合が多い。それによって産業規模を縮小してしまったのが日本酒である。高度経済成長期の需要に対応して、アルコールを添加した低品質モノを乱造してしまったのである。是非とも焼酎メーカーには、同じ轍を踏んでいただきたくない。
そこで、焼酎メーカーがやるべきこととは・・・
まず今高値を付けているメーカーは、
1.高価格商品の市場規模見極めと、その市場規模への対応
2.日用商品を加えた最低2ラインの生産体制の構築
いま中値、もしくは低価格のメーカーは、
3.日用商品の品質向上
4.日用需要開拓のための市場浸透施策の実施
上記の課題はそれぞれ役割を持っている。
1は上級品マーケット、2は中級品マーケット、3と4は“テーブルワイン”ならぬ“ちゃぶ台焼酎”マーケットを形成する。
とはいえ、ワインは世界市場向け商品。市場規模が違う。論をつめる必要はあるかも。
と、だらだらと焼酎メーカーの悲哀に触れてきたが、消費者としてもできることはある。
それは“名前で呑む”ことを止めることだ!
たしかに「あぁ、あの焼酎呑んでみたい」と雑誌で読んだ酒を飲みたくなる気持ちは分かる!!
私も「おぉラトゥール、おぉムートン、呑んでみたい!!」といつも言っている。
しかし!! ひとたび1000円台のワインに目を向ければ、なんと上質なものが揃っていることか!!これは値段やマスメディアの情報を頼りに銘柄を判断していては分からない。
開けるときのドキドキ感、見つけたときの達成感、やってみなはれたまらんよ
とまぁ、勢いで書ききってしまったが、最後に番組の後半でもっとも印象的だったシーンについてふれたい。それは都内に出てきた素朴な生産者の男性が、定価の5倍にもなった自分の焼酎を買い取るシーン。冷静に考えれば、そんなことをしたってほとんど意味がない。市場に与える影響はゼロに等しい。けれども彼は買い取った。それは自分の造った焼酎を本当に大切に思っていることの表れではないだろうか。
庶民の食べ物・飲み物と言われていたものが、メディアで脚光を浴びて一時のファドの後に衰退していくのはよくあることだが本当に悲しい。